『三日間の幸福』(三秋縋) ― #おすすめの本

『三日間の幸福』(三秋縋)の概要

人間は誰しも、いつかは死ぬ。

人生とは何なのだろう。

そう思う方もいるだろう。

しかし、どうやら主人公の人生には良いことがなく、自分の寿命査定価格がまさかの1年につき1万円だった。

この事実を受け止めにくい主人公は、未来の自分よりも現在を楽しみたいという思いから僅かな余生を残し、残りの寿命を売り払うことになる。

そして、そこに現れたのが「監視員」のミヤギである。

彼女の為に生きたい、生きることが俺の幸せだと気付いた時には、自分の寿命が縮まっていた。

三日間の幸福 (メディアワークス文庫) [ 三秋 縋 ]

感想(16件)


『三日間の幸福』(三秋縋)の好きな登場人物

クスノキ(主人公)の監視員となったミヤギが好きです。

監視員としてクスノキの元へ現れた当時の彼女は、素っ気なくただただクスノキを監視する業務を遂行するだけでした。

クスノキが死ぬまでにしたいことリスト100を作成し、それに着いていくミヤギ。

最初は、くだらないことに時間を費やすクスノキの姿に落胆していましたが、次第に彼女の気持ちに変動が見られ、その時の彼女の仕草と行動が何より愛おしいです。

監視されるクスノキからすると、彼女は一体何者なのだろうと疑問を抱き、監視するミヤギからすると、彼は一体何をしているのだろうと疑問を抱く・・・

このやりとりが次第に変化していきお互いの気持ちと心情を読み取る頃には、読者側も吸い寄せられるこのになるでしょう。

『三日間の幸福』(三秋縋)の印象的な場面

クスノキの寿命があと僅かに迫った頃、監視員のミヤギが唐突にクスノキの元から消えてしまい、代わりの監視員がクスノキの元へやってきました。

長い間、共に過ごした相方(監視員)が突然いなくなる現状に戸惑いと寂しさを隠せないクスノキは、あらゆる手順を使ってミヤギの居場所を探し出すことにしました。

探しても探しても見つからないミヤギは、本当にこの世から消えてしまったのかと考え出すクスノキ。

次第に地元で注目を浴びるようになるクスノキは、公園で子どもに囲まれながら落ち込んでいると、咄嗟に聞き覚えの声が・・・。

声がする方に目を向けるとそこには見覚えのある女性、そうミヤギでした。

ミヤギは監視員から普通の人間に戻り、クスノキの元へ会いに来てくれたのです。

この場面は、人生の大切さと出会いの重要さを教えてくれたと実感しており、非常に好きです。

彼の行動力に惹かれると共に感動の涙で溢れてくる場面です。



『三日間の幸福』(三秋縋)で得られたもの

「人生とは?」という問の答えは、必ずしも存在しません。

人それぞれの主観と思考による答えは導き出せますが、人生や命に関しては我々人間は奥深しい知識を得ていません。

そんな中、『三日間の幸福』(三秋縋)の主人公であるクスノキは、当初は冴えない大学生でしたが、監視員のミヤギとの出会いによって次第に人間味の心と彼女を思いやる気持ちが形成され、人生、命、出会いの有難みを感じることとなりました。

フィクション作品ですが、愛する人を亡くす経験は世界中の誰もが体験します。

そういった体験を思い起こさせるものが『三日間の幸福』(三秋縋)にはあります。

気持ちと行動の照らし合わせによって、実現不可能なことにも行動する力を養う能力が人間の根底に培われていることを学びました。

『三日間の幸福』(三秋縋)はこんな方におすすめ

人生に苦しんでいる、または生きることへの意味が分からない方に読んで頂きたいです。

人間、生きていると喜怒哀楽の感情は形成されます。

しかし、敏感な人間ほどマイナス思考が蓄積され自己嫌悪に陥り目先のことが見えなくなります。

それは、主人公のクスノキと同じです。

しかし、彼の行動力は私達でも同様のことができるので、不安から自信へと形成変化を生み出せる一冊だと思います。

是非、疲れた、泣きたい、もう嫌だという時に読んで頂きたいです。

『三日間の幸福』(三秋縋)のまとめ

三秋縋氏が書く本は、恋愛ものは少ないです。

空想上のものや我々読者の心を動かす作品が多く存在します。

そんな中でも、『三日間の幸福』は、フィクション作品ではありますが、人間の根底に潜む「人生や命」を題材として作られているため、ページをめくればめくるほど、展開が読み取れなく、早く読みたいと思うようになります。

あらゆる展開が繰り返されるため、「読者の予想を裏切る」作品となっているため、推理力も鍛えられます。

そして最後は感動的な結末を迎えます。

本当に心を揺さぶられる作品になっています。