吉田健一一覧

『私の食物誌』(吉田健一) ― #おすすめの本

翻訳、文芸批評、エッセイスト、そして食通として知られた吉田健一氏が「自分がこれまでに食べて美味しかったもの」を述べたエッセイです。 取り上げられている食べ物は90以上に登り、それぞれの食べ物について1ページから2ページ程度の短文エッセイが書かれている、と言う内容です。 どこから読んでも楽しめる内容です。 適当に開いたページから読むというのも『私の食物誌』(吉田健一)の楽しみ方の1つになります。 書かれている内容は様々で、時には時代の移り変わりを感じさせたり、文化の違いを感じさせたり、特に面白いのは吉田健一氏独特の語り口を最も良く味わうことが出来る1冊である、という点です。 登場する食べ物は日本国内のものですが、いわゆる食通が喜びそうな物は一つもなく「信越線長岡駅の弁当」など全く予想もしない食べ物がずらりと並びます。 吉田健一氏という、多分、もうこんな人は出てこないであろう人物が残した不思議な、けれど、最も吉田健一氏らしいエッセイです。