『砂の器』(松本清張) ― #おすすめの本

砂の器 上 (新潮文庫 まー1-24 新潮文庫) [ 松本 清張 ]

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『砂の器』(松本清張)の概要

国鉄蒲田駅構内操車場で発生した殺人事件の捜査は難航し、幾度も捜査は振り出しに戻されていた。

そんな中、殺人現場付近のバーで交わされた被害者と犯人の会話、

「カメダはどうか?」

「カメダは相変わらず」

の会話が唯一の手がかりだった。

『砂の器』(松本清張)の注目の登場人物

主人公でもあり犯人でもある和賀英良は、優れた才能を秘めた新進気鋭の前衛音楽家。

忌まわしい過去の生い立ちを隠すために、戸籍詐称を小学生時代に自分ひとりの手で為しうるほどの、早熟で傑出した人物です。

その彼が事件を引き起こさざるを得なかった動機に、多くの読者は同情すると思います。

彼の魅力と類稀な才能が得させた現世的な成功物語の背後には、彼にしか分からない誰にも話すことの出来ない体験と記憶があります。

事件と絡めて最後まで飽きさせない登場人物です。

『砂の器』(松本清張)のおすすめの場面

解決の糸口さえ見えない事件に捜査本部は解散させられます。

しかし最後まで捜査を担当することになった警視庁のベテラン刑事と若い刑事の二人のコンビが、日本の四季を背景に全国を猟犬のように飛び回る場面です。

その際利用した列車の中で、駅弁を食べたりするシーンや、ルミノール反応が出そうな布キレを捜し求めて線路際を這いつくばるシーンが印象的です。

作者・松本清張の筆の力に負うところが大きく、その描き出された情景に共感出来ます。

『砂の器』(松本清張)から得たもの

この原作を基に、いくつかの映画とドラマが制作されました。

そのうちの一本は、日本映画の最高傑作と言われているだけのことはあり見応えがあります。

原作者の松本清張自身、映画が小説を越えたとうならされたほどです。

原作の小説とそれを基に作られた映画やドラマもそれぞれの世界観で楽しめることを教えてくれた作品です。

日本映画の最高傑作と言われる映画では宿命をテーマとしていますが、小説でもそれは感じます。

自分の力では、どうすることも出来ない宿命を人間は誰しも抱えている・・・

人間が一人で生きられない以上、人との関係は所詮宿命であることをこの小説は教えてくれました。

『砂の器』(松本清張)はこんな方におすすめ

強烈なインパクトのある社会派推理小説であり、少なからずその後の人生で影響を与える可能性も感じられます。

社会の一端を知る為にも一度は読んでみることをおすすめしたくなる魅力があります。

特に高校生や大学生等のこれから社会にでる若い世代には、ひとつの心構えとして読んでみてもいい作品です。

『砂の器』(松本清張)の魅力まとめ

読み終えて思ったのは、作者・松本清張のただならぬ知識量と、着想の卓抜さを感じました。

それに比べて自分の想像力など、取るに足りないことを思い知らされるほどでした。

この本を読むと作者・松本清張の深い知識と、ネットもない時代に集めた様々な情報をもとに素人では考えられないほど、深い世界をいとも簡単に作り出す能力に長けていることに改めて感服させられます。

この世界を知らずに過ごしてはあまりに惜しいと思うほどの作品です。

一冊の本の中に、今まで見たことのない世界がそこにはあります。

砂の器 下 (新潮文庫 まー1-25 新潮文庫) [ 松本 清張 ]

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