『戦争育ちの放埓病』(色川武大)の概要
9歳の時に日支事変が始まって13歳の時に太平洋戦争へと突入した、著者の若き日の日々を振り返っていく。
浅草の芝居小屋や映画館へ通いつめたり全国の競輪場を徒歩で巡ったりと、意外にもお気楽な毎日を過ごしていくのだった。
感想(1件) |
『戦争育ちの放埓病』(色川武大)の好きな登場人物
著者以上に変わり者な、父親のキャラクターがユーモアたっぷりでした。
退役軍人の恩給暮らしになり、戦時下でも我関せずといった泰然自若な佇まいになります。
「頭に近い部分は人手にかけない」
を座右の銘として、50歳を過ぎてから歯が抜け出しても歯医者に行くことはありません。
入れ歯もせずに食べ物を蛇のように丸呑みにする、グロテスクな食事の風景には圧倒されます。
朝昼晩の3食をお茶碗にご飯山盛り2杯ペロリと完食し、100歳を目前にして大往生を遂げたというから驚きです。
『戦争育ちの放埓病』(色川武大)好きなセリフ
時折挿入されていく味わい深いセリフの中でも特に好きなのは、
「ただ痛苦さえ我慢していれば昨日までの日々が今日も続くと思っていた」
です。
終わりの見えない戦争によって、遠からぬ死を覚悟していた著者の気持ちが伝わってくる言葉になります。
年上の周りの人たちが次から次へと軍隊へと取られていく、異様な当時のムードも印象的でした。
著者がいよいよ徴兵検査を受ける年齢に達した途端、終戦を迎えるシーンも何とも皮肉になります。
『戦争育ちの放埓病』(色川武大)から得たもの
著者は昭和4年の3月28日に現在の東京都新宿区に当たる、東京市牛込区矢来町に生まれました。
第二次世界大戦下では軍事工場勤への労動員や、通っていた旧制中学校を無期限停学処分になるなど不遇の青春時代です。
戦後の闇市を麻雀のテクニックを武器にして生き延びた後に、高度経済成長期を尻目に黙々と執筆を続けていきます。
自分自身に降りかかってくる災難や困難を小説の題材に活かしてしまう、逞しさと抜け目のなさを学ぶことが出来ました。
『戦争育ちの放埓病』(色川武大)はこんな方におすすめ
昭和の終わりを見届けるかのように、平成元年の4月10日に60歳でこの世を去った著者の思いが込められています。
間もなく元号が移り変わる今だからこそ、若い世代の皆さんに是非とも手に取って頂きたい1冊になっています。
『戦争育ちの放埓病』(色川武大)まとめ
2017年の10月11日に幻戯書房から刊行されている、随筆集になっております。
『転居』から『元っこはあそこ』までの、これまで単行本や全集に未収録だった貴重な86編を収録しました。
著者は本名だけでなく「井上志摩夫」の別名義で娯楽小説を乱作したり、「阿佐田哲也」のペンネームでギャンブル文学にチャレンジしたりとその旺盛な創作活動で有名です。
この本を読んだことがきっかけになって、その他の作品にも興味が涌いてくるかもしれません。
ブログ『大人の読書感想文』管理人が、SNSを通じて知り合った作家さんの本です。
従順のすすめ 開かれた未来へ通じる至極の10の思想【電子書籍】[ 清水 竜志 ]
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・タイトル:『従順のすすめ』
・著者:清水竜志
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