『いつまでも白い羽根』(藤岡陽子)の概要
大学受験に失敗し家庭の事情もあり、両親の勧めで看護学校に入学した瑠美。
気が進まないまま進学した看護学校で、淡々と日々を過ごしていく。
ペアとして学ぶ不器用だが優しく溌剌とした千夏、そっけないが美人の遠野、子育てをしながら学ぶ主婦の佐伯らと、厳しい実習や試験を経験する。
友人達との出会いや医学生の拓海への恋心が、かたくなで張り詰めていた瑠美の心を、少しずつ変えていく。
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『いつまでも白い羽根』(藤岡陽子)の注目の登場人物
東京都の御成門にある看護学校が舞台となっています。
様々な背景を持ちながら看護師を志す、瑠美・千夏・遠野・佐伯のそれぞれのエピソードが内容の濃いストーリーを作り上げています。
その中で、読者の誰からも好かれ放っておけない気持ちにさせるのは、千夏と思います。
不器用で要領が悪く、決して優秀な生徒とはいえない千夏ですが、誰よりもひたむきに人の役に立つ為にと看護と向き合います。
瑠美達のことも常に励まし、明るくしてくれる千夏のあたたかさと健気さに、誰もが自然と彼女を応援したい気持ちになることでしょう。
読み進めながら、徐々に千夏から目が離せなくなっていしまします。
『いつまでも白い羽根』(藤岡陽子)の注目の場面
瑠美が初めての病棟実習で担当することになった千田仙蔵との交流の場面が大変印象的です。
瑠美はあまり他人に興味がなく、笑顔を作ったり、その場しのぎに優しい言葉を掛けるということが出来ません。
看護師としては不向きであるその特質が、千田とマッチします。
瑠美の”患者の前であろうと飾らない”、見ようによってはそっけない態度が、千田には率直さとして映ります。
瑠美もまた、末期ガンに侵された千田の病について丹念に学ぶことによって、千田の想いを推し量っていきます。
気難しい患者と思われている千田が、瑠美相手には心を開き、次第に自分の過去を語りだします。
そして瑠美に、自分が死んだら渡して欲しい、と1通の手紙を託します。
看護学校での日々をただ淡々と、憂鬱から抜け出せずに過ごしていた瑠美が大きく変化する場面です。
『いつまでも白い羽根』(藤岡陽子)のおすすめのエピソード
瑠美は希望する進路に進めず、「とりあえず」進んだ看護学校に対して、全くと言っていいほど気力のない日々を過ごしています。
入学したその日から、退学のことを常に考えているような生徒でした。
しかし、千夏との出会いや、実習での患者達との出会いが、徐々に瑠美を前向きに看護師を目指す者へと変化させていきます。
瑠美にとって看護師を目指すということは、はじめは気乗りしないものであったはずでしたが、1日1日を過ごすうちにそれがひとつの目標となり瑠美に道しるべを与えていきます。
瑠美の姿を通して、目の前にあることを真摯にこなしていくことの大切さを感じるように思います。
目の前のことをこなすことが、いつの間にか自分の道を作ることにつながっていくのだと思うと、毎日の些末なことも前向きにこなしていけるのではないでしょうか。
『いつまでも白い羽根』(藤岡陽子)はこんな方におすすめ
看護学校への進学を考えている学生はもちろん、希望した進路に進めなかった学生にはぜひ読んで欲しい1冊です。
特に後者の方にはおすすめです。
おそらく、自分の希望した進路に進み、理想を持ってなりたい自分に向かって邁進出来る方はそう多くないはずです。
多くの方がまさに主人公の瑠美と同じ状況にあると思います。
しかし瑠美はその中から自分の道を見つけていきます。
その姿に、多くの方が勇気付けられるはずです。
『いつまでも白い羽根』(藤岡陽子)のまとめ
文体が難しくなく、また人物が多彩なため飽きることなく読むことが出来ます。
読書が得意でない人でも、無理をせずに少しずつ読み進めることが出来る本だと思います。
多彩な人物が丹念に描かれており、必ずひとりは「推し」の人物が見つけられるということも、この本が読者を飽きさせない理由のひとつでしょう。
人物の背景や感情に入り込んでいくうちに、実習や授業の場面を通して描かれる人物の姿にどんどん色がついていきます。
別の人物に注目しながら再読するのもおすすめです。
そうすると物語がまた違った角度から楽しめることでしょう。
この本を読み始めた読者一人一人が推理を楽しめる小説です。
はたして天然ボケ女子高生の主人公の忍よりも先に犯人を突き止めることが出来るでしょうか!?
推理小説好きのあなたにおすすめの一冊です。