『水曜日の凱歌』(乃南アサ) ― #おすすめの本

『水曜日の凱歌』(乃南アサ)の概要

終戦を迎え、戦後を生き抜く女性の姿を綴った小説。

主人公鈴子は戦争中に兄妹を亡くし、事故で父親も亡くし、母と二人で激動の時代を生き抜いていく。

RAA(特殊慰安婦協会)で働く母の姿に抱く複雑な気持ち。

戦争中に培われた価値観が全て覆される戦後。

関わる人々や時代背景から、戦後の日本が苦しみながら変革して行った様子がわかる作品。

水曜日の凱歌 (新潮文庫) [ 乃南 アサ ]

感想(2件)

『水曜日の凱歌』(乃南アサ)の好きな登場人物

主人公鈴子は女子中学生ですが、戦後の混乱を生き抜くために男の子の格好をさせられます。

全ては危険から身を守るための策であるとわかってはいるものの、どうしてもそれを受け入れられない複雑な心境。

また、どうして男の子の格好をしなくてはいけないのかと思春期特有の疑問も沸きます。

少女から大人になる狭間に居る彼女の心情が細かく描かれています。

もとは裕福だった家庭から、いつもお腹を空かせて過ごさなければならなくなった生活の変化や戦中戦後の苦しみや心の葛藤等、女子中高生に是非読んで欲しい内容です。

『水曜日の凱歌』(乃南アサ)の好きな場面

女学生時代に英語が出来た母親が、進駐軍が利用する慰安婦施設で働くことになり、その施設がある大森海岸へと引っ越すことになります。

その土地で出会った子供達と、海辺で米軍の捕虜施設に投げ込まれる物資を拾う場面があります。

数人の男の子達と一緒に拾った物資の中から、綺麗な絵柄の缶に入ったクッキーを1箱もらいます。

とても大切にそのクッキーを食べ、甘くておいしいクッキーに感動する鈴子の様子が、当時の食糧事情や時代背景と子供達の様子と重なって印象的です。

『水曜日の凱歌』(乃南アサ)で得たもの

日本女性の防波堤となるべく設立されたRAA(特殊慰安婦協会)というものの存在をこの小説で初めて知りました。

日本も侵略した中国や韓国で同様の事をしていたことから、日本女性の貞操と純潔を守るために作ったというのが表向きの設立の理由です。

その施設にひっきりなしに訪れる進駐軍、施設の前には進駐軍のジープが長蛇の列になっていたり、こんな時代が戦後にあったのかと知ることになります。

この時代を生きた女性達は、夫を亡くし親を亡くし、一人で生きて行くためには住むところと仕事とお金が与えられるということが救いにもなったのかと思うと、やるせない気持ちで一杯になります。

『水曜日の凱歌』(乃南アサ)はこんな方におすすめ

含め戦争を知らない世代の女性、特に女子中高生に読んで欲しい作品です。

夏には原爆投下や終戦記念日等があり、戦争の事を考えさせられるタイミングが多くあるので、そういう時に読むと思索を広げられるのではと思います。

夏休みの読書感想文などにも適している小説だと思います。

『水曜日の凱歌』(乃南アサ)のまとめ

乃南アサ氏の歴史的な事象を基に描かれた小説に出会えたことが新鮮でした。

長編小説ではありますが文章も柔らかく、登場人物の心の動きや時代背景、その場所の風景等も細かく描かれているので、情景をイメージしやすくとても読みやすい作品に仕上がっています。

ミステリーの様に先の展開が気になる作品とは違い、戦後を生き抜く女性達がどう変化していくのか、それを悲しい気持ちになったり応援する気持ちになったりしながら、淡々と読み進めていくことができます。

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