『君たちは今が世界』(朝比奈あすか) ― おすすめの本

『君たちは今が世界』(朝比奈あすか)の概要

公立小学校6年生のやや学級崩壊気味のクラスを舞台に、4人(文庫版では5人)の児童それぞれの視点で描かれるオムニバス形式の小説です。

小さい頃とは違い家族とも心理的距離ができ友達が何より大事、好きな子はいても恋愛というには現実味が薄い12歳の心をリアルに思い出させてくれるお話です。

『君たちは今が世界』(朝比奈あすか)の印象深い登場人物

オムニバス形式の第4章「泣かない子ども」で描かれる見村めぐ美が最も印象深いキャラクターでした。

めぐ美はクラスの女王様的存在である前田香奈枝の親友で、クラスで一番目立つ4人組グループの1人です。

第1章から第3章にも登場するめぐ美は、親友やクラスの男子と犯罪にもなりかねない担任いじめを共謀したりクラスメートの女子に無神経な発言を浴びせる、いわゆる「クラスに1人はいる意地悪な女の子」です。

大人(読者)からは共感しにくい人物でありながら、第4章に入りめぐ美の視点から見た世界にはたしかな現実味を感じました。

『君たちは今が世界』(朝比奈あすか)の好きな場面

「泣かない子ども」であるめぐ美がクラスメートの男子を前に涙をあふれさせ、感情を爆発させた場面から、自分の母親の人間性を母親というフィルターを通さず認めた(諦めた、とも言える)ところまでの流れが、最も好きな場面です。

学区内で一番高級と言われる高層マンションに母、姉、兄と暮らしています。

父は海外出張中で母は専業主婦。裕福な家庭ですが実際は母親はネグレクト気味で、家の掃除を誰もしないし朝食はなし、夕食はいつも出来合いで時間も定まっていない…という環境です。

それに対して傷ついていないフリをしていためぐ美が自分の中の痛みを認めて、母親を諦める場面がとても印象的でした。



『君たちは今が世界』(朝比奈あすか)で得たもの

多くの方が小学の時感じていた教室の雰囲気を鮮明に思い出すのではないでしょうか。

できれば関わり合いになりたくないと思うタイプの子は何人かいたと思います。

くだらなくて底意地の悪いふざけ方をする子や、理由もなく意地悪で攻撃的な子。

嫌いだった彼ら・彼女らから見えていた世界が少しわかったような気がします。

我が子が飛び込んでいくであろう子供だけの世界の空気感を思い出すことができてよかったです。

『君たちは今が世界』(朝比奈あすか)はこんな方におすすめ

学生時代から遠く離れた大人、特に子供のいる方に読んでほしいです。

親の目を離れて子供だけの世界が構築されていく小学校の教室の雰囲気を思い出すことで、子供達は頑張っているな、1人1人で見たら「悪い子」なんていないのかなと思えます。

『君たちは今が世界』(朝比奈あすか)のまとめ

この本の著者である朝比奈あすか氏のことは『翼の翼』という小説で知りました。

中学受験する子の親が陥りがちな狂気の世界がリアルに描かれています。

子供の中学受験を考えていて読んだのですが、誰もが陥りかねない教育虐待って実はこんな風なのかなと感じ、こちらもとても印象に残りました。

受験が差し迫った保護者の方にはおすすめしにくいくらい、痛みを感じる話です。

『翼の翼』をきっかけに小学校高学年の子供の不安定な心を思い出し、今回の『君たちは今が世界』(朝比奈あすか)を読むに至りました。

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