『爆撃聖徳太子』(町井登志夫) ― #おすすめの本

『爆撃聖徳太子』(町井登志夫)の概要

主人公は小野妹子。

しがない下級豪族の彼が仕事先で見かけた男、聖徳太子のせいで彼の人生はとんでもない悪路を行くことになる。

世界を手に入れようと次々に隣国を倒し、領土を拡大していく隋帝国の次の目的地は琉球。

ここで彼らを止めなければ、倭国が次の犠牲になってしまう。

遣隋使になった小野妹子は頭がおかしい聖徳太子の部下となって、琉球を守る戦いに身を投じることになるのだが…。

『爆撃聖徳太子』(町井登志夫)の好きな登場人物

好きな登場人物はメインキャラクターの小野妹子と聖徳太子こと厩戸皇子です。

この2人の関係性は上司と部下に当たります。

小野妹子はただただ自分の目の前にある仕事と問題に取り組んでいるだけなのに、厩戸皇子に出会いある意味気に入られてしまったが故に命がいくつあっても足りない災難に巻き込まれます。

一方、生まれつき耳と頭が良すぎたがため、生き地獄を味わい続けている厩戸皇子にとって、小野妹子は唯一脅迫しなくてもやるべきことをやってくれる、ある意味珍しい人間でした。

この『爆撃聖徳太子』(町井登志夫)は、2人の人生の中で隋帝国に倭国を侵略させないための数年間のみを描きます。

その中で関係性が深まり、それでも基本的な人間性は何も変わらないままの2人が好きです。

『爆撃聖徳太子』(町井登志夫)で好きな場面

作中では厩戸皇子のイかれたエピソードが無限に出てきます。

中でも小野妹子が初めて厩戸皇子と出会った場面と、タイトルの伏線を回収するラストの爆撃シーンが最も印象に残っています。

出会いの場面では厩戸皇子は小汚い姿で竹刀を振り回し、複数の国の言葉で「うるさい」と叫びながら焦点の合わない目で丘を歩いています。

後にそれが厩戸皇子だと知らされた小野妹子と読者の驚きは、それはそれはとてつもないものでした。

爆撃シーンでは、なんと空飛ぶ船『黒駒』が登場し、時代小説とは一体!?

、と脳みそがおかしくなるような感覚を味わえます。

さらにここは小野妹子が燃え盛る江都の中に逃げ惑う人々を見て、悲しみつつも悟りを開く瞬間でもあります。



『爆撃聖徳太子』(町井登志夫)で得たもの

まず歴史小説に対する、小難しそうという偏見がなくなったこと。

次に実在したであろう人物達の人生と歴史が、こんなにも面白おかしい小説の題材になるという衝撃を受けました。

『爆撃聖徳太子』(町井登志夫)に出合った時、私は学生でしたが少しの弱みに付け込まれては厩戸皇子の思うままに操られる人々を見て、悪いことはできないものだなぁと思ったものです。

また日本史も苦手でしたが、この小説に登場する前後の時代だけはテストで満点が取れるほど詳しくなりました。

『爆撃聖徳太子』(町井登志夫)はこんな方におすすめ

歴史の勉強が面白くないなと感じる学生や、ストレスの溜まった社会人の方に読んで欲しいです。

全体的に話はスムーズに進みますし、歴史小説のため教科書の中に登場した国や人名が登場します。

あったなぁそんな国……という気持ちで読み進めたり、逆に小説に出てきた国だなと思うと勉強もスムーズに進むのではないでしょうか。

とにかく荒唐無稽な話が続くので笑って読める小説でもあります。

『爆撃聖徳太子』(町井登志夫)のまとめ

総評して、正面衝突の交通事故のような小説です。

小野妹子が厩戸皇子に出会ったのも事故、読者がこの小説に出会うのも事故。

そもそもタイトルからして歴史小説にはおかしいなと思ってはいたのですが、まさか本当に爆撃シーンがあるとは思わず、読了後しばらく呆然とした覚えがあります。

漫画の「パリピ孔明」やドラマの「新解釈日本史」のような、なんちゃって歴史ものがお好きな方にもばっちりハマるのではないでしょうか。

爆撃聖徳太子 (PHP文芸文庫) [ 町井登志夫 ]