『痴人の愛』(谷崎潤一郎) ― #おすすめの本

『痴人の愛』(谷崎潤一郎)の概要

穣治はある日、美しい少女と出会う。後に妻となるナオミである。

西洋人への憧れとナオミの美しさが真面目な穣治の日常を狂わせていく。

身の美を自覚し上手く利用していくナオミと、ナオミに振り回される穣治。

二人の恋愛の結末とは!?

痴人の愛改版 (新潮文庫) [ 谷崎潤一郎 ]

感想(13件)

『痴人の愛』(谷崎潤一郎)の好きな登場人物

ヒロインのナオミははじめはカフェで働く女給でした。

兄弟姉妹もたくさんいて、実家は貧乏。

そんなナオミでしたが穣治に気に入られたことにより生活は一変します。

英語やダンスなど様々な習い事をしたり活動写真を見に行ったりと、家事もろくにせず楽しく暮らすようにります。

そのうちに穣治によって溺愛され、男性を虜にする自らの美を自覚したナオミは次第に傲慢になっていきます。

彼女がもしその美を失ったら……、と想像するとゾクゾクとした感覚に陥ってしまいます。

『痴人の愛』(谷崎潤一郎)の好きな場面

穣治がナオミにすがりつくシーンが印象的です。

穣治はナオミの美に虜になりますが、ナオミの奔放さに呆れ果て激昂し、出て行けと言います。

しかし本当にナオミが出て行ってしまうと、ナオミの不在に絶えきれず禁断症状が出てしまうのです。

出会ったばかりの頃は穣治がナオミに何もかもを与えてやり必要とされる立場だったのに、今となっては穣治の方がナオミの不在に絶えられずすがりつく立場になってしまっている・・・

この逆転が非常に面白く、また美とはこんなにも人を狂わせるものなのかと興味深く思う場面です。

『痴人の愛』(谷崎潤一郎)で得たもの

「悪女」という言葉を聞きますが、普段ピンとこない方も『痴人の愛』(谷崎潤一郎)を読めば「悪女」の意味を理解できると思います。

また、「悪女」というのがどのように生まれていくかもわかる気がします。

様々な物語に登場する「悪女」と呼ばれる女性たちはみな総じて美しく、ナオミも一般的には「悪女」と呼ばれています。

自身の美を利用し、男達を狂わせていく存在である悪女・・・

はじめの頃のナオミはそこまで悪女の雰囲気はなかったのに、穣治に甘やかされて最後には立派な悪女になってゆくのです。

「悪女のつくり方」「悪女へのなり方」が描かれている貴重な小説のような気もします。

『痴人の愛』(谷崎潤一郎)はこんな方におすすめ

少し前の日本の名作に興味のある方にぜひ読んでほしいと思います。

谷崎潤一郎と聞くと「読みにくそう」「難しそう」と思う方も多いかも知れませんが、思っているほど読みにくくはないことがわかるでしょう。

難しい言葉や言い回しはほとんど出てきませんし、物語の内容自体もとてもわかりやすく興味深いので、初心者にも読みやすい作品です。

『痴人の愛』(谷崎潤一郎)のまとめ

珍しい西洋風の美と過剰に与えられる愛によって生み出しされた悪女・ナオミと、その悪女にすがりつく真面目で滑稽な男・穣治の物語です。

谷崎潤一郎自身のフェチや価値観も多く散りばめられた作品で、少し古めの小説ではありますが、そこまで堅苦しくも難しくもない作品です。

初心者の方にも読みやすい小説ですのでおすすめです。

日本の名作の1つに間違いなく入っていると思います。

少しでも小説に興味があるのであれば、一度は読んでおくことをおすすめします。



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