『獣の奏者』(上橋菜穂子) ― #おすすめの本

『獣の奏者』(上橋菜穂子)の概要

たった10歳で母親を死刑で亡くした少女・エリンが、流れ着いた先で様々な人と出会います。

賢いと言う学問上の才覚を買われ、禁断の獣・王獣と心通わす術を編み出してしまい、王国の運命を左右する存在となってしまいました。

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感想(1件)

『獣の奏者』(上橋菜穂子)の好きな場所

10歳のヒロイン・エリンが流れ着いた先で、蜂飼いの男・ジョウンに助けられ、養子となって育つ際に連れてかれた市場です。

このファンタジーの世界観は中世〜近世のアジアの架空の某所とされています。

エリンは服より生き物に興味がある、今でいうリケジョのような子供であったので、市場でジョウンが買おうとしていた飾り布よりも、蜂の生態に目を輝かせていました。

この場面はこの物語の外伝でエリンが好きな人ができた時、初めて着飾る楽しみに目覚めたことの伏線となりました。

『獣の奏者』(上橋菜穂子)の印象的な場面

王国の運命を左右する存在となってしまったエリンが、後半の展開で彼女と、彼女が必死になって育てた王獣(空を飛び、極めて戦闘力が高く、戦争の道具にされてしまう獣)の間の絆は断たれていたはずなのに、戦場でたった1人となったエリンを王獣が助けにやってくる場面です。

ここで前半の物語は幕を下ろしました。

ストーリーや文章の息遣いは架空の世界観なのに、まるで史実のNHKの大河ドラマや歴史小説で感じるものに近く、スケールの壮大さを感じた。



『獣の奏者』(上橋菜穂子)で得られたもの

物語の舞台の年代は前近代であり、女性の自立がとても難しい状況にあります。

それでも女性が、一途に真理を探求し学問を続けることの素晴らしさ、そしてゆくゆくは舞台の王国の最重要人物となるなかで、何を捨て何を守るかという覚悟に圧倒された。

ヒロインは最終的に、我が身を引き換えに戦場で命を落とします。

最終章で教師となった彼女の息子の語りで、彼女の人生が遺したものはとても大きいことがわかります。

女性が困難の中で人として気高く生きることの大切さを知らしめてくれました。

『獣の奏者』(上橋菜穂子)はこんな方におすすめ

小学校中学年のあまり普段読書をしない人にとって読みやすくハードルは低いと思います。

また、大人の方でも、歴史好きな人にはおすすめできます。

まるで史実の大河ドラマのような語りで、多少ショッキングな描写もあるので心に余裕がある時に読んで頂きたいと思います。

『獣の奏者』(上橋菜穂子)のまとめ

何度も何度もこの小説を繰り返し読み、漫画版、アニメ版も視聴したおかげで、何も見ずスラスラとあらすじを綴れるレベルにこの世界の虜になりました。

何度か読むうちに、「私も緑の目になってエリンの気分を追体験したい」と思うようになりました。

エリンは若干18歳でしっかりとした自分の意見が言えて、コンプレックスを逆手にとって、悪い王族を手玉に取るシーンもあります。

こんなに強くて賢い人間になりたいなと憧れる方も多いでしょう。

しかし反対に「こんな完璧超人いない」とも思えますが。

ほとんどの人間はエリンの聡明さも爽やかな可愛さも芯の強さも全く持っていません。

だからこそ、物語の登場人物として魅力的なのだと思います。