『捏造の科学STAP細胞事件』(須田桃子) ― #おすすめの本

『捏造の科学STAP細胞事件』(須田桃子)の概要

数年前に国民の話題の的になり、社会問題までに発展したSTAP細胞騒動の裏側を生々しく描いたノンフィクション作品です。

元々は須田桃子氏が毎日新聞の科学記者時代に連載していた記事内容を加筆修正して、単行本として書籍化されました。

神戸理化学研究所、つまり当時のCDBのラボユニットリーダーである小保方晴子氏を中心に、彼女に関わる様々な職員や研究者への著者ならではの体当たり的な独自取材の内容をほぼそのまま引用しており、さらに著者自身の意見や批評を加筆した内容です。



『捏造の科学STAP細胞事件』(須田桃子)の印象的な登場人物

『捏造の科学STAP細胞事件』(須田桃子)の主人公でSTAP騒動の中心人物でもある小保方晴子氏の経歴に興味を惹かれました。

一般的に研究室のリーダーの多くは50代の男性で就くものであるが、彼女は30代女性という異例なスピード出世であり、どのようなエリートコースを歩んできたかに先ずは興味があった。

一方で非常に女性らしくキュートでチャーミングな服装や話しぶりで、実験ノートにアニメキャラクターのシールを貼り付けたり、祖母からもらった割烹着を着て実験する等、従来の「高学歴でエリートな理系女子」とはほど遠いガーリーなイメージとのギャップもまた魅力的に感じます。

『捏造の科学STAP細胞事件』(須田桃子)の印象深い場面

著者の須田桃子氏は小保方氏及びその関係者達に電話やメール、時には自ら出向いてCDBを訪問して取材を行っている。

その中でも最も印象深い場面は、当時の小保方氏の直接的な上司でありCDB副センター長の笹井芳樹氏の方から、須田氏に直接、初めて電話があったと描かれている場面があります。

「須田さん、明日、是非、記者会見に来て下さい。みんながひっくり返りますから。」

というような内容であった。

事実、この翌日に小保方氏と笹井氏のプレスリリースを含む記者会見は行われました。

記者が会見場を押し寄せて、数日間は会見の特集が組まれたことを覚えている方も多いのではないでしょうか。

2人のこの会見が今思えばSTAP騒動の始まりなのですが、当時の笹井氏の自信ぶりが伺え非常に魅了された場面です。

『捏造の科学STAP細胞事件』(須田桃子)で得たもの

理系出身で生命科学を専攻していたことから、STAP細胞やSTAP現象に関してある程度理解はある方にとってはもちろん興味深い内容と思います。

しかしそれだけでなく、この『捏造の科学STAP細胞事件』(須田桃子)に関してはサイエンティフィックな内容以上に、CDBで働くエリート研究者たちのドロドロした人間的な一面や嫉妬も合わさった人間模様が取材記事を基にして生々しく描かれています。

専門的なことに詳しくない方にもこういった内容は新鮮であり、高学歴やエリート集団に身を置く人達も、一般庶民と同じ感覚を持つ「生々しい人間」であるのだと認識させてくれます。

人間を色メガネで観たり、偏見を持ったり、勝手なイメージで判断をしてはいけないという考えを持つことができる、とてもいいきっかけになる一冊と思います。

『捏造の科学STAP細胞事件』(須田桃子)はこんな方におすすめ

著者の須田桃子氏は女性で若手の新進気鋭の科学ジャーナリストです。

理工学部の出身でありながら毎日新聞の記者として活躍し、また生命科学の記事を担当するという畑違いからの活躍ぶりです。

しかしそれ故に、幅広い目線と感覚を持ち合わせている彼女の価値観がとても興味深いと思います。

まるで理系女子の生き方の新しいモデルケースをしめしているようです。

理系女性、いわゆる”リケジョ”はまだまだ世間的には少数派であり、まだまだ世間的には認められていない部分があり、苦労も多いと思います。

是非、そのような若い”リケジョ”の方々に新しい将来を模索するためにも、『捏造の科学STAP細胞事件』(須田桃子)をおすすめしたいと思います。

『捏造の科学STAP細胞事件』(須田桃子)のまとめ

まず『捏造の科学STAP細胞事件』(須田桃子)は「大宅壮一ノンフィクション賞」を筆頭にいくつかの賞を受賞している点で十分に評価を受けたレベルの高い素晴らしい作品ということをお伝えしたいと思います。

ハードカバーでかなりのボリュームがある本ですが、その内容は女性ならではの柔らかい表現が用いられ、図表などでSTAP細胞の説明もわかりやすく表記されており、また起承転結がしっかりした構成で成り立っているので、専門的な知識がない方でも大きな負担を感じず読めると思います。

多くの方はこの騒動について、ワイドショー的に一部分だけが切り取られた伝え方が多く、短絡的に「捏造した=悪い」と結論付けていると思います。

『捏造の科学STAP細胞事件』(須田桃子)はSTAP騒動が起きた核心部分に赤裸々に迫っており、さらに著者の須田桃子氏の知識や経験に裏打ちされた独自の切り込んだ角度からの、意見や批評がうまく加味されており、物事の真相に迫る素晴らしい良書でになっています。

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