『芝桜(上)』(有吉佐和子) ― おすすめの本

『芝桜(上)』(有吉佐和子)の概要

「正子」と「蔦代」というふたりの芸者の関係を通して、女の人生を描いた長編小説の上巻です。

正子と蔦代の10代~30代を通して、芸者の卵から一人前の芸者になるまでに男女の関係やお金のトラブル等、ありとあらゆる問題が起こります。

明治・大正・昭和の風俗も興味深く描かれています。

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『芝桜(上)』(有吉佐和子)の印象的な登場人物

主人公ふたりの対称的な性格やふるまいが魅力的に描かれています。

子供の頃からまっすぐで正直な正子は、融通がきかずその性格で損をすることも多い。

一方何かにつけて要領が良く人間関係に強く、相手を手玉に取るような蔦代は、その機転で正子の窮地を救うようなことも多い。

性格的には全く相容れないふたりゆえに、腐れ縁的な付き合いがずっと続きます。

正子は蔦代と絶交しては気がつくとまた付き合っている・・・

そんな、ふたつの強烈な個性に惹かれます。

『芝桜(上)』(有吉佐和子)の好きな場面

物語の冒頭が秀逸です。

ふたつの個性の違いを鮮烈にあらわすエピソードが描かれています。

ふたりはまだ14,5の芸者見習い。

お祭りの縁日で、ふたり揃ってお稽古の帰りに金魚すくいをします。

正子は一途で向上心が強い性格ゆえに大きな金魚を狙ってはすくい網の薄い紙を破ってしまい、ムキになってお金を注ぎ込みます。

横で見ていた蔦代は、頃を見計らって、弱った金魚や死んだ金魚をテキ屋のおじさんにねだり、おじさんも結構設けた後ですから、それをまんまと貰って帰ります。

あとで、その金魚をどうしたのか? そこがちょっと衝撃のエピソードになります。

『芝桜(上)』(有吉佐和子)で得たもの

ふたりの人生を追いながら、人というものは自分の個性や能力、キャラを活かした生き方をすることが一番強いのだということがわかります。

「人間はかっこよく生きなければいけない」とか「こうでなければならない」とか「一番上を目指すべき」とか、そういう固定観念に囚われると、自分の、自分だけの人生を強く生きることができないのではないかと思いました。

特に「男性は、男らしく」とか言われて育ちますが、いわゆる「男らしい」ことだけが男の価値観じゃないよなあと気付かされます。

『芝桜(上)』(有吉佐和子)はこんな方におすすめ

特に若い女性に読んでもらいたいです。

女性の友達関係などで、蔦代の生き方を読んで「ああ、こういう人いるいる」「こわいよねえ」と自分の友人の顔を思い浮かべると思いますが・・・

実はその友人も、あなたのことを蔦代とダブらせている可能性が高いかも知れません。

『芝桜(上)』(有吉佐和子)のまとめ

長編小説ですが、有吉佐和子氏の文体はとても柔らかくしなやかですので、長さを忘れるくらいスッと読めると思います。

また、日常で起きる出来事が本当によくあるような出来事で、しかもそこから驚くような展開に結びつくので、凄惨な殺人事件や、超能力者が出てきて脅かすような小説とはまた違った面白さがあると思います。

平凡な日常、その積み重ねによる人生、それがいちばんドラマチックなんだ!そんな感動に浸れる小説です。

ぜひ下巻も読んで下さい。