『生きてるだけで、愛』(本谷有希子) ― #おすすめの本

『生きてるだけで、愛』(本谷有希子)の概要

「いいなあ、津奈木。あたしと別れられて、いいなあ」

鬱から来る過眠症で引きこもり気味の主人公、寧子。

その恋人の津奈木。津奈木とよりを戻そうと寧子の生活に介入して津奈木の元恋人。このままではいけないと自分の生活を変える為に奮闘する寧子だが……。

誰かに分かってほしい、そんな願いが届きにくい時代に描かれる新しい愛の形。

大切な人に五千分の一秒でいいから分かってほしい。

生きてるだけで、愛。 (新潮文庫 新潮文庫) [ 本谷 有希子 ]

感想(9件)

『生きてるだけで、愛』(本谷有希子)の注目の登場人物

注目の登場人物は主人公の寧子です。

多くの方に重なる部分があり、とても感情移入して物語を読み進めることが出来るのではないかと思います。

寧子が津奈木にプレゼントをした手袋をつけなかった時、部屋の中であるにも関わらず着けてと感情的になり、津奈木が着けるとふざけるなと怒鳴ります。

傍から見れば何をしているのかと思われる場面かも知れません。

しかし、この場面で手袋が役に立ったとただ感謝されたいだけなのに上手く言葉に言い表すことができない寧子の性格が凄く表現されている一場面だと思います。

『生きてるだけで、愛』(本谷有希子)の好きな場面

私が好きな場面は寧子が全裸で津奈木とマンションの屋上で話すという最後の場面です。

鬱から抜け出した寧子が初めてしっかり津奈木に本音をぶつける場面です。

中でも「いいなあ、津奈木。あたしと別れられて、いいなあ」という台詞は自分自身が一番自分のことを嫌っていても別れることのできない現実と、その辛さを津奈木に分かってほしいという気持ちを最も物語っているように思います。

冒頭の富嶽三十六景の伏線を回収する五千分の一秒でいいから覚えていてほしいという寧子の台詞。

全部とは言わない、一緒に過ごした三年間をとは決して言わない、今この瞬間にしっかり自分と向き合ってほしいという寧子の気持ちを表現している気がして泣かずにはいられません。

『生きてるだけで、愛』(本谷有希子)で得たもの

この物語で最も感動する場面は、津奈木の最後の一言と思います。

「でも、お前のこと、本当はちゃんとわかりたかったよ」という台詞。

最後まで津奈木は寧子と同じ熱量では向き合っていません。

自分が寧子と接する時どれだけ疲れないかを重視している人物であるというような描写をされています。

しかし、最後に発せられたこの台詞で本当は理解してやりたかったという思いを伝えています。

不器用な二人が付き合ってしまったからこそ引き起こされてしまった現実ではありますが、この台詞で全て救われればいいなと思ってしまいます。

現実世界の恋愛でもそれぞれ同じ熱量で付き合っていないこと方が多いと思います。

そのことに気付くことが出来ました。

それを心に置きつつ、相手とどのように向き合うかということを考えることができるようになりました。

『生きてるだけで、愛』(本谷有希子)はこんな方におすすめ

恋人が自分と同じ熱量で向き合ってくれないという悩みを抱えている人に是非とも読んでほしいと思います。

寧子が自分が普段口にできない思いを代弁してくれていてとても共感できる部分が多くあると思います。

しかし、読む人によってはとんでもなく辛くなるのは承知しておいてほしいと思います。

『生きてるだけで、愛』(本谷有希子)のまとめ

「いいなあ、津奈木。あたしと別れられて、いいなあ」

何度読んでも鬱になります。

これを昔付き合っていた恋人に読ませていたらまだ恋人という関係を続けることができていたのだろうかと、思う方もいるかも知れません。

「私と同じ熱量で向き合って欲しかった。」

「いつも私ばかりだった。」

代弁してくれる寧子に共感の涙を流すのではないでしょうか。

自分が嫌いでこんな自分と別れたい。それができない。

その辛さですら分かってほしいと言う寧子のことを、本当はちゃんとわかりたかったと言う津奈木。

この言葉だけで本当に救われると思います。



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