『ウイグル人に何が起きているのか 民族迫害の起源と現在』(福島香織) ― おすすめの本

『ウイグル人に何が起きているのか 民族迫害の起源と現在』(福島香織)の概要

ウイグル人弾圧の現状についてのノンフィクション作品。

想像を絶する監獄社会となった中華人民共和国新疆ウイグル自治区。

ウイグル人に対する民族浄化的政策、日本に住んでいても恐怖におびえるウイグル人等々、ウイグル人弾圧の恐るべき状況を現地ルポやウイグル人へのインタビュー等から描き出した、和書としては数少ない珍しい作品。

ウイグル人に何が起きているのか 民族迫害の起源と現在 (PHP新書)


『ウイグル人に何が起きているのか 民族迫害の起源と現在』(福島香織)の注目の場所

著者・福島香織が20年ぶりに訪れた西暦2019年の新疆ウイグル自治区のカシュガルは、羊の姿が消えた代わりに漢人が増え、一見きれいで秩序だった町に変貌していました。

しかし、警察だらけの街で筆者の落とし物を拾ったら必ず届けてくれる「正直者」の住人達は、超監視社会で強制収容所送りを避けようと心を押し殺して生きているのでした。

2018年国連人種差別撤廃委員会では、最大200万人規模のイスラム教徒が強制収容施設に入れられている、と報告されたそうです。

(米国政府推計で300万という数字もネットで伝えられています。)

現在の中華人民共和国は全国的に、膨大な量の監視カメラ、顔認識AIなどを使った監視社会化が進み、国民一人一人に政府が「スコア」を付け、スコアが低い者は制裁を受けるというような、監獄国家化傾向にあるとは聞いていました。

この本によるとそれが新疆ウイグル自治区では、とくに「進んで」いるようです。

ここではウイグル人であるだけで、まずスコアが減点されます。

さらに政府がウイグル人住民に要請する内容は、彼らの伝統的な習慣や宗教を破壊するようなことです。

例えば、イスラム的な話題を家庭内で話してもダメです。

イスラム教の戒律に従って豚肉を食べないどころか、出された肉料理がなんの肉か気にしただけで減点という徹底ぶりです。

また、驚いたことに外国籍のウイグル人も収容所送りになっています。

収容所から奇跡的に生還し、その証言が紹介されているオムル・ベカリさんは、ウイグル出身ながら、カザフスタン国籍になった後に里帰りをした時に拘束されたとのことです。

さらに、日本在住のウイグル人(中国籍)の匿名座談会で彼らの置かれた厳しい状況も分かります。

ウイグルに居る家族がいわば人質になって、中国政府から圧力を受けていること。

脅されて中国政府の手先になっているのではないかと・・・

日本在住ウイグル人同士でも互いに警戒して生活しているといったこと等です。

『ウイグル人に何が起きているのか 民族迫害の起源と現在』(福島香織)の注目の部分

本書の中に欧米ではよく報道されるウイグル人に対する人権弾圧を、ほとんど日本では報道しない事に関して原因を考察した部分があります。

分量はわずか2,3ページですが、自身もジャーナリストである著者の見識は、世に溢れたマスコミ批判と一線を画した深いものと感じました。

日本の報道機関が欧米に比べ中国政府からの圧力に弱いのは、ひとつには国力の差の為です。

中国も軍事力も含めた国力に勝る米国が相手の場合のように遠慮しないからだと指摘しています。

また、欧米と日本では報道にまつわる考え方や「覚悟」が違うという話はさらに貴重だと感じました。

いわく、欧米では報道機関にとっては報道がとにかく優先なので、その為に現地で協力してくれた人々が迫害、弾圧されようがやむを得ないという考えで動いているそうです。

これに対し、日本人は報道関係者に限らず社会全体としてそこまで割り切れないから弱腰になってしまう、ということです。

どちらも、ありふれたマスコミ批判ではわからない、この問題の深刻さを教えてくれます。
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『ウイグル人に何が起きているのか 民族迫害の起源と現在』(福島香織)で得たもの

この本を読んだおかげで、ウイグル人の置かれた状況が、思っていた以上にひどい事がわかりました。

また「明日は我が身」という意味だけでなく、日本在住のウイグル人も困難な状況にあることから、他人事ではないという感じを何倍も強く受けました。

そしてさらに、上記の日本のマスコミに関する考察はとても印象深かいものです。

これまでは、日本の報道機関が外国政府の圧力に弱いのは、彼らの私的な都合や金もうけ等の、いわば「いやしい」動機が原因ということが多く言われます。

しかし、そればかりでなく国力の違い、報道に対する考え方の違いという、国家や国民全体の問題に起因する面が大きいことと気付かされます。

これまでどこか自分達と違うと思われがちな報道関係者も、同じ日本人なんだと、ある種の親近感に感じるようになるかも知れません。

同時にマスコミの現状を変えることの困難さも分かると思います。

ウイグル人の人権問題等、海外の問題に関しては海外メディアからの情報をよく把握していかないといけないという事が理解出来ます。

『ウイグル人に何が起きているのか 民族迫害の起源と現在』(福島香織)はこんな方におすすめ

この本はあらゆる日本人におすすめします。

強いて言うならば、会社や団体のなかで特に人の上に立つ「管理職」のような人や、やがてそうなるであろう若い人にぜひ読んでほしいと思います。

それは私達の日本の民主主義の維持や、世界平和に深く関わってくると思うからです。

この本から現状を知り、日本のマスコミが報じない事柄にも関心を持ってもらいたいと思います。

また日本のメディアだけでなく、日ごろからその時その時の状況を把握する為にも海外メディアにも目を向けてほしいと思います。

皆でそうすることによってしか正しい世論形成は出来ず、民主主義が外国人勢力にむしばまれるのに抵抗することが出来ません。

また、ウイグル人弾圧のような問題を解決して世界平和を目指す道も、その延長上にしかないと思います。

『ウイグル人に何が起きているのか 民族迫害の起源と現在』(福島香織)のまとめ

著者の見解によると、ウイグル人の人権問題についての本格的にまとめた書籍は日本では約10年振りとのこと。

つまり、他に類する本は習近平体制になってから一段と悪化したとされる状況や、そこから解る事を教えてくれません。

一部イスラム原理主義のテロ組織のおかげで、チベット問題等に比較してウイグル問題には比較的冷ややかだった欧米も、2018年あたりから急に関心を寄せてきた感があります。

これは、米中衝突に代表されるように、非民主主義国家と民主主義国家の対立が強く意識されるようになった影響かと思います。

日本という民主主義国に住む我々日本人も、当然民主主義陣営側に立っているわけで、この問題に関わらないで済むわけはありません。

無関心が許されない以上、状況を把握するのはいわば民主主義国家の国民として必須です。

それに向けて、暗い話をまだしも読みやすく書かかれたこの本を読むことで、一歩を踏み出すことができるのはいわばラッキーと言うべきかも知れません。

あらためて、すべての日本人におすすめの一冊と思います。

当ブログおすすめの一冊

ブログ『大人の読書感想文』管理人が、SNSを通じて知り合った作家さんの本です。

従順のすすめ 廉価版: 開かれた未来へ通じる至極の10の思想 (MyISBN – デザインエッグ社)


・タイトル:『従順のすすめ』

・著者:清水竜志

・内容:現代思想についての本です。

「好きとは何か」
「学業学歴とは何か」
「お金とは何か」
「ストレスとは何か」
「宗教とは何か」
「個性とは何か」
「若者の品格とは何か」
「競争とは何か」
「死とは何か」
「人間とは何か」

といった、現代社会の漠然とした疑問を新しい理屈の真理で解明する、という新しい取り組みをした充実の内容です。

是非、一冊お手に取り著者である思想家の清水竜志さんを応援して下さい。

清水竜志さんのTwitter:https://twitter.com/messages/media/1116542864228413445