『対岸の彼女』(角田光代) ― #おすすめの本

『対岸の彼女』(角田光代)の概要

一見何不自由なく暮らしている主婦小夜子が、何かを変えたいと探した職場で社長の葵と知り合う。

同じ大学ということで意気投合し、振り回されながら友人関係を続けていく。

ある事件を起こし、話題になった女子高生2人のうちの1人が葵だと知り、葵の過去が明らかになっていく。

対岸の彼女 (文春文庫) [ 角田 光代 ]

感想(36件)

『対岸の彼女』(角田光代)の好きな登場人物

横浜から母親の実家の群馬に引っ越してきた葵は、仲良しグループに所属しない魚子に興味を持ち、魚子と行動を共にします。

魚子には不思議な魅力があり、仲良しグループの中に居たらちょっと鬱陶しくなりそうですが、2人でならずっと一緒に居たいと思う女の子です。

現実世界に実在したとしても、友達になりたくなる存在です。

大人になった葵は魚子のように振る舞うので、魚子に憧れを持っていたのだと分かります。

それでも葵は魚子にはなれないので、ただのわがままと捉えられてしまうのが可哀想に思えてしまいます。

『対岸の彼女』(角田光代)の好きな場面

葵と魚子が事件を起こし、しばらく会わない日が続いた後、葵のお父さんがお母さんに内緒で葵と魚子を会わせてくれる場面がおすすめです。

2人なら何処へでも行けそうな気がすると家出をしますが、高校生が知らない土地でお金を稼ぐのは難しいのは当然のこと。

結局何処へも行けずに戻ることになりますが、周りは2人が一緒にいることに嫌悪します。

そんな2人を引き離すのではなく、こっそり再開させてくれるお父さんの存在が唯一の救いのような気がします。

『対岸の彼女』(角田光代)で得たもの

高校時代の人間関係は不思議なもので、閉鎖された空間で限られた選択肢を選びながら上手くやっていくことを考えます。

魚子から、その選択肢のどれも選びたくないと思ったら選ぶ必要はなく、他に選択肢を探せばいいと教わりました。

誰にでも大事なものはあって、それが今いる場所での人間関係であるとは限らないわけです。

また新しい人間関係はすぐそばに転がっていて、気付きさえすれば入っていくことも可能ですし、入っていかないという選択肢もあると分かりました。

『対岸の彼女』(角田光代)はこんな方におすすめ

新しい環境に飛び込むことに不安を感じている方に読んでもらいたい作品です。

自分は変わらないといけないと思う人も、このままでいいんだと思う人もいると思います。

読み始めは、人間変わらないといけないと思うかも知れません。

しかし時間をおいて読み直してみると、このままでいいと思うようになるかも知れません。

選択肢はそれぞれにあり、自分自身で決められるのです。

『対岸の彼女』(角田光代)のまとめ

葵も魅力的ですが、その両親の魅力も物語全体をまとめているように感じます。

この話の中で、葵のお父さんが1人だけファンタジーの世界にいるような優しさがあり、お母さんが至って現実的で、それでバランスがとれているような感じがします。

お母さんは帰って来たくなかった地元に戻ることになり、その葛藤が垣間見えます。

お父さんは娘を思って知らない場所で慣れない仕事をし、さりげない優しさをかけてくれます。

娘を持つ父親としての多くの方の理想像があるのではないでしょうか。



当ブログおすすめの一冊

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