『人間の証明』(森村誠一)の概要
警視庁麹町署の棟居刑事は、はるばる米国から日本にやってきた黒人青年の殺人事件の捜査担当となった。
点と線を結ぶような捜査を続けていく中、お茶の間を賑わす売れっ子のセレブ評論家の八杉恭子を容疑者として推測。
物的証拠が全くない中、セレブ評論家の八杉が罪を認めるかどうか、黒人青年の残した思い出の品を見せながら人間性の欠片に問いかける。
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『人間の証明』(森村誠一)の好きな登場人物
黒人青年の殺人事件の捜査担当となった麹町署の棟居弘一良刑事が、捜査に明け暮れるところが好きです。
ホテルまで黒人青年を乗せたタクシー運転手から、青年が「ストウハ」と意味不明な言葉を口ずさんでいたと証言を得る・・・。
また、青年を羽田空港から滞在先まで乗せたタクシー内から、西條八十のボロボロになった詩集を探し出す・・・。
言語学者に助言を求め、運転手はストローハット(麦わら帽子)を、「ストウハ」と聞こえたのだと推測する・・・。
ホテルの最上階の形状が遠くからみると麦わら帽子のように見えることが分かり、青年はそれを見て向かったのだと考える・・・。
執念深く細部まで捜査し推測して真実を追求するエネルギッシュなところが魅力的な刑事です。
『人間の証明』(森村誠一)の好きな場面
棟居刑事が八杉恭子を事情徴収する場面が感動します。
八杉に母性・人間としての心が欠片でも残っているのであれば、証言するはず・・・、その欠片に棟居刑事は賭けることにしました。
ジョニー(黒人青年)との思い出の品である麦わら帽子と詩集を見せて駆け引きを試みます。
それらを前に全てを八杉は自供し、真実を話しました。
ジョニーは成長した自分を見て欲しいと純粋な気持ちで母親に会いに来たのだと。
しかし、八杉は嬉しさが全身に込み上げる中、現在の地位を失いたくない・・・、気が付いたらナイフを刺していたと、全てを白状します。
『人間の証明』(森村誠一)で得たもの
主人公の警視庁麹町署の棟居刑事の父は、戦後直後の混乱期にアメリカ兵にリンチされ死亡しました。
母は別の男を作って棟居をおいて逃げました。
アメリカ兵や母のような最悪な人間性を持った人達を憎みながら刑事になりました。
人の死をおろそかにするのは許せないとの信念を持って刑事をやってきた棟居刑事と、最初は罪を認めないものの、黒人青年との思い出の品を見せられ涙を流すセレブ評論家の八杉とのやり取りに、人間性の大切さを改めて学ぶことが出来ました。
『人間の証明』(森村誠一)はこんな方におすすめ
八杉が母性を残していたこと、黒人青年を殺害したのが苦渋の決断であったこと、母にナイフを刺された黒人青年が、母が罪を負わないように必死になって現場から離れていったこと等、人間性をテーマにした感動の小説です。
人間性のベースが形成される小中学生の時期に読んでもらい、人間性の大切さを知ってもらいたいです。
『人間の証明』(森村誠一)のまとめ
母を思いジョニーは、母が犯人だと分からないようにナイフを刺されながらも殺害現場から遠く離れていったのだと。
青年は、麦わら帽子に見えるホテルの最上階に向かって行き、母親と出会えた喜びを胸にしまい生涯を終えたという真相が、小説の最後に八杉の自供により判明します。
母を思う息子ジョニーの心、母性の欠片を見せた八杉の最後の心、八杉の人間性を取り戻すために駆け引きする棟居刑事の心、3つの心にとても感動する作品です。