『村上海賊の娘』(和田竜)の概要
織田信長の勢いが全国にとどろいていた時代に、瀬戸内海一帯を治めていた村上水軍を描いた作品。
村上水軍の中でも独立性の強かった能島村上の当主・村上武吉の娘、景が物語の主人公。
景は女性ですが大柄で屈強な腕力の持ち主で、男にも負けないほどの戦の腕前を誇り、好奇心旺盛な性格と通行料を払わない船員は容赦なく斬り捨てる残忍さを併せ持ってた。
景は信長と対立して窮地におちいっていた大坂本願寺に駆け付けようとしていた門徒達と出会い、瀬戸内海から本願寺まで送ることになる。
これをきっかけに景は難波の海で、他の海賊衆との出会いや戦をする本当の意味を見出していくことになる。
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『村上海賊の娘』(和田竜)の注目の登場人物
海があるところにはどの場所にも海賊がいるものです。
難波の海には注目の登場人物である眞鍋七五三兵衛が率いる和泉水軍が登場します。
彼は豪胆を絵に描いたような大男であり、戦では巨大な槍を用いた豪快な戦術を得意としています。
瀬戸内海では不細工な顔として女性としての人気のない景ですが、七五三兵衛や和泉の海賊衆たちは景を絶世の美女として見ており、そんな景とのやりとりも見どころのひとつです。
基本的には細かいことを気にしない豪胆さを持っていますが、当主として家の存続を第一に考えて動くことのできるしたたかさも持っており、多くの家来から頼られる存在です。
『村上海賊の娘』(和田竜)の注目の場面
史実にもなっていますが、天王寺合戦で大坂本願寺と信長軍が戦った際の描写は克明に描かれており、大勢の門徒たちと眞鍋七五三兵衛らもいる信長軍との戦いは読み応えがあります。
信長軍にしても本願寺側の門徒にしてもキャラクターが立っているため、どちらにも肩入れしたくなってしまう展開も手に汗にぎるものがあります。
門徒や雑賀衆などの活躍で戦況は一進一退を繰り返し、信長が登場することでさらに戦況は変わり、大坂本願寺をめぐって壮絶な戦いが繰り広げられます。
『村上海賊の娘』(和田竜)から得たもの
日本にも海賊というものが存在し、しかも織田信長や上杉謙信、毛利輝元らがひしめく戦国時代にあって瀬戸内海に浮かぶ島を領地としている能島村上が、どこの国の勢力にも属さず自分達の海軍力を持って独立を貫いていたというのは、非常に興味深く読んでいて楽しめました。
小説自体はフィクションではありますが、出来る限り資料を集めて史実に則った形で紹介しているので臨場感を味わうことが出来ました。
当時の海賊のあり方や死生観等も垣間見えるので、戦国時代に生きる人々の生き方や考え方を教えてくれた作品でもあります。
『村上海賊の娘』(和田竜)はこんな方におすすめ
日本の海賊を題材にした話しは少ないので、日本に海賊が存在した事実を知らない方には、ぜひ読んでもらいたい作品です。
また織田信長など戦国時代の物語について興味がある方は、前もって知識があるため理解が早く読みやすい作品になっていると思います。
また別の角度から戦国時代の歴史を見られると思うのでおすすめです。
『村上海賊の娘』(和田竜)の魅力まとめ
小説『村上海賊の娘』(和田竜)は上下巻にわたる長編小説で、文庫本では4巻にわたる作品です。
しかし登場人物や舞台設定が理解出来ると長さを気にせずに一気に読めてしまう作品でもあります。
まるでその時代を見ているかのように、そこに生きる人たちの様子ややりとりを読むことが出来るので、読んだ後には瀬戸内海の見え方が少し変わると思います。
戦やそこに至る背景等、史実を忠実に描いている為歴史好きな方はもちろん、そうでない方にも勉強になる物語です。