『騙し絵の牙』(塩田武士) ― おすすめの本

『騙し絵の牙』(塩田武士)の概要

速水輝也は大手出版社に勤めるやり手の編集者。

頭の回転が速く話上手で社内外での人望が厚く、作家からの信頼も得ていた。

だが、彼が編集長を務める雑誌トリニティが廃刊の危機に直面する。

調子のいい食えない上司の無理な要求を飲みつつ、若手作家の小説発表の場を探しつつ、バラバラな部下をまとめつつ、家族の問題を抱えつつ、労働組合の矢面にも立ったが時代の流れには逆らえなかった。

騙し絵の牙


『騙し絵の牙』(塩田武士)の好きな登場人物

主人公の速水です。

非常に主人公の存在感が大きい小説です。

同じ職場で働いていたら頼りに出来、確実に憧れの的であると同時に、時折彼の熱意についていけないこともあるかも知れません。

とても頭が良くて人当たりもいいので、愚図な人間の心情は理解できないのだろうなと思います。

そんな完璧な彼が、自分の部下として連れていきたいと思うような人間に私はなっていたいと望みつつ、付いていったら結構大変だろうなとも思います。

『騙し絵の牙』(塩田武士)の好きな場面

本筋とはあまり関係がないのですが、速水夫婦が唯一顔を見合わせて真剣に議論する場面です。

速水は典型的な仕事人間。

常に思考を巡らせ続けていますが、妻に関してだけは考えることを遠ざけ続けてしまいました。

先読みして、どんな状況にも対応できるエリートでも、家族の問題だけは別だったようです。

速水の弱い部分がもろに露呈した場面でした。

とても男くさいストーリーの中で、最も女性が共感しやすいシーンでもあります。

『騙し絵の牙』(塩田武士)から得たもの

「思考を続ける人間には、真贋を見極める目が備わっている。」

という言葉が胸に刺さりました。

情報が垂れ流しの現代社会では、何も考えず受動的でいるだけでも結構疲れます。

そんな状態で膨大な情報を精査することなど出来るはずもないわけです。

思考すること自体は誰にでも出来ますが、思考を続けることはとても難しい。

速水も妻に関してだけは思考をストップさせてしまったのです。

毎日、少しでも能動的に考える時間をとっていきたいと思える作品です。

『騙し絵の牙』(塩田武士)はこんな方におすすめ

就職を前にした人や、出版業界に興味のある人におすすめです。

特に出版社の内情は非常にリアルだと思うので、業界に憧れている人は読んでおくべきかと思います。

速水を目標とするもよし、反面教師にするもよしです。

読書好きな方もこの本を読むことで、今まで以上に本への愛着がわくこと間違いなしです。

『騙し絵の牙』(塩田武士)のまとめ

俳優の大泉洋さんをモデルとして書かれた、面白い企みの小説です。

2020年6月に本人主演で映画化も決まっています。

言葉巧みなところはイメージ通りです。

主人公の本への情熱がほとばしる作品ですし、これほどの思いをもって書籍が作られていることに感激もしました。

最後、彼が苦渋の決断を下してからのスリリングな展開は脅威です。

人生、何かを切り捨てなければいけない時が必ずくるのかも知れません。

その時に、スパっと手放せるかどうかが命運をわけるのだなと思いました。



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