『かめくん』(北野勇作)の概要
かめくんはカメです。
自分が本物の亀ではないことは知っています。
失業し、寮も追い出されたかめくんは、新しく住むアパートを見つけ、暮らし始めます。
かめくんは図書館が好きです。
だから図書館に通いだします。
かめくんは仕事をしないと生きていけません。
だから仕事もし始めます。
図書館、職場で待っているかめくんの大冒険とは…?
そして木星で行われている戦争は、かめくんにどう関係するのか…?
![]() |
|
『かめくん』(北野勇作)の注目の登場人物
なんといっても主人公のかめくんでしょう。
かめくんは名前を持ちません。
カメだから、かめくんです。
そして、かめくんというひらがなの名前の響きにふさわしい、ユーモラスな性癖の持ち主です。
行動もユーモラス。
例えば、りんごが好きとか。
でも仕事となると、かめくんという響きに似合わない、果敢な勇気を発揮します。
その仕事ぶりが見ものなのです。
『かめくん』(北野勇作)の印象に残った場面
かめくんが河原を散歩する場面が好きです。
カメだからのろのろとしか歩けないので、のろのろ河原の土手を上がったり下がったりします。
「あ、カメ!」と言われ、サッカーボールが飛んできたりしますが、かめくんは見事に足でさばきます。
その辺りの描写が、かめくんは実は俊敏なであるところがよく表現されていて秀逸だと思います。
河原の風景の描写ものんびりしていて、かめくんにふさわしい場所だというのがよく分かります。
かめくんの散歩の場面は注目です。
『かめくん』(北野勇作)から得たもの
実は哲学的にとても興味深いことを言っている本です。
ジャン・ボードリヤールの『シミュラークルとシミュレーション』の概念が、この小説を読むことによってより一層理解できます。
それはかめくんの仕事とかめくんと木星の戦争の関係に大いに関わってくるのですが・・・
そして現代社会の、「実は全てはフェイクなんじゃないか」という、ポストモダンを通過した後に誰もが抱いている疑問が鮮やかに表現されています。
だから現代哲学に親しんでいる人はここに哲学の現実化を見て取れるでしょうし、この小説を読んだ後に、ポストモダンの哲学者の本を読むのもおすすめです。
哲学的なところで、非常に収穫を得ました。
![]() |
シミュラークルとシミュレーション (叢書・ウニベルシタス 136) [ J.ボードリヤール ]
|
『かめくん』(北野勇作)はこんな方におすすめ
哲学的ではありますが、さらりと読める本です。
しかしある程度時間を掛けてじっくり読んで頂きたい作品でもあります。
読んだ後に考えてほしいのです。
現代社会のあり方に疑問を少しでも抱いている人は、読めば何らかの収穫があるのではないでしょうか。
『かめくん』(北野勇作)のまとめ
単行本が刊行されたのは2002年ですが、現在でも十分通用する内容の小説です。
小説としての完成度が高く、テーマとしていることが時代が変わっても普遍的なものであることを意味します。
これから何年何十年と時を経てもその内容は生き続け、一時代のファッションアイコンでないことは確かでしょう。
リアルのみで完結する時代が終わった後の、バーチャルの時代にずっと通用する小説だと思います。
![]() |
この本を読み始めた読者一人一人が推理を楽しめる小説です。
はたして天然ボケ女子高生の主人公の忍よりも先に犯人を突き止めることが出来るでしょうか!?
推理小説好きのあなたにおすすめの一冊です。