『むらさきのスカートの女』(今村夏子)の概要
街でちょっとした有名人になっている「むらさきのスカートの女」の生活を主人公がストーキングするという物語です。
主人公がは、最初は「むらさきのスカートの女」の生活パターンや勤務先などをチェックしていた程度でしたが、ある日を境に自身が働いているホテルの清掃員になるように誘導するようになり、ストーキングの行動が過激になっていきます。
価格:1,430円 |
『むらさきのスカートの女』(今村夏子)の登場人物達
舞台は現代の日本。
場所はそれほど田舎ではないが、かと言って都会でもない埼玉や千葉のような「平凡な日本のどこかの街」です。
主な登場人物は2人です。
街の人から変わり者扱いされている「むらさきのスカートの女」と、
その女を遠目から見つめる、ラブホテルの清掃員として働く、ちょっと生活の破たんしている女性(主人公)です。
むらさきのスカートの女がラブホテルと働くようになってからは、ホテルの局長が登場し、
次第に「むらさきのスカートの女」は妻子のいる局長と不倫関係に陥ります。
『むらさきのスカートの女』(今村夏子)の好きな場面
「むらさきのスカートの女」が主人公と同じラブホテルの清掃員として働くようになって、意外にも「むらさきのスカートの女」が仕事がスラスラとできるようになっていく場面が好きです。
ホテルで働き始めるまでは色々な会社に面接に行っては落ちていたのですが、意外にもホテルの仕事ができることが分かり、「むらさきのスカートの女」が職場に自分の居場所を見出していく場面はテンポもよく、応援したい気持ちになります。
また、そうやって「むらさきのスカートの女」が順調に働く姿を見つめる主人公の眼差しも冷静なようでどこか狂気じみていて、互いのキャラクターが際立つ魅力的な場面です。
『むらさきのスカートの女』(今村夏子)で得たもの
序盤は「むらさきのスカートの女」が変わり者であるように描かれていますが、途中からそれを観察している主人公の方が狂気じみていきます。
その狂気が完全に振り切った狂気ではなく、ごく普通の人の感覚からちょっと飛躍した程度の狂気であることが、興味深いと思いました。
つまり、狂気というのは最初から振り切った変人にのみ生まれるではなく、「誰しもが持っている」ちょっとした好奇心や欲望から生まれてくるものではないか? というメッセージが込められている気がして、その点をさりげなく読者に伝えることができている優れた小説だと思いました。
『むらさきのスカートの女』(今村夏子)はこんな方におすすめ
文章が読みやすいうえに、話のテンポも速いので、普段あまり小説を読まない方におすすめです。
「芥川賞ってなんか難しそう、文学って分からない。」
と思っている人でも、十分楽しめると思います。
文学作品の文章はどうしても、一文が長かったり、主語までの修飾語が異常に長かったりと、読みにくさだけで断念する方も多いかもしれませんが、
この小説は「~は~から~へ、向かった。」といったシンプルな構文が多いので、とても読みやすくまとまっています。
また、本作は2019年の芥川賞受賞作なので、話題作に興味のある方は是非一度読んでみることをおすすめします。
『むらさきのスカートの女』(今村夏子)のまとめ
登場人物が少ないく話の筋も至ってシンプルですが、最期まで飽きずに読むことができます。
それは文章に無駄がなくよく推敲されている上、テーマが「ストーキングする側に生まれる狂気」に絞られているからだと思います。
文学作品は文章が難解なうえに、テーマや登場人物も複雑で読むだけで大変・・・、となりがちですが、この作品は小説というよりもむしろ主人公が「むらさきのスカートの女」について書いた”日記”のような文体なので、とにかく読みやすいです。
繰り返しになりますが、普段小説を読まない方にもおすすめの一冊です。
ブログ『大人の読書感想文』管理人が、SNSを通じて知り合った作家さんの本です。
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